空を祈る紙ヒコーキ
公園は笑い声やふざけあう声で溢れていた。私とは無縁に思える明るい世界。どうして私はあの人達みたいに楽しくなれないんだろう。
何かに引かれるように公園に足を踏み入れた。その瞬間、頭に軽く何かが触れた。カサッと音を立て、それは地面に落ちた。
「紙ヒコーキ?」
足元に落ちた紙ヒコーキは無地のルーズリーフで作られていた。飛んできた方向を見上げると、大きな木の上に男がいた。
「すいませーん」
男は謝り、慣れたように木から降りてきた。しょっちゅう登っているらしい。
紙ヒコーキを拾い上げると同時に男の顔を見て目を疑った。木から降りてきたのは、去年の夏休みにネットカフェで会った男だった。
「ありがとうございます。大丈夫ですか? 目とかに当たったりしませんでした?」
私の手から紙ヒコーキを受け取るなり愛想よく言い、男は私の顔を心配そうに覗き込んだ。
「あの……?」
何も言わない私に首を傾げ、男はさらに訊いてくる。
「大丈夫?」
あんなことがあったのに忘れてる?
信じられなくて、尋ねた。
「私のこと覚えてないんですか?」
「え……?」
「前に一度会ってますよね。駅前のネカフェで」
「……!!」