空を祈る紙ヒコーキ
傷つけられる前に牽制しておくに限る。
「最初に言っておきますけど、私はお母さんの再婚に反対です。拒否権がないので仕方なく従ってますけど、新しい家族に何の期待もしてないしあなた達と仲良くするつもりもないんで」
最後に言い残し、立ち去ろうとした。
「うん。普通そうなるよなー」
独り言のように、空は話しだした。
「正直俺も兄になるっての実感ないもん。今まで父さんと二人でやってきたし、ひとりっ子だから父さんがいない時は一人暮らしみたいな状態だったし。新しい家族ができるなんて聞いて今から不安だよ」
セリフとは真逆の明るい空の口調に、私はうっかり足を止めてしまった。怒られたり暴言を吐かれると思っていたのに理解を示され、意外に思った。
「涼はまだ中学出たばっかだし、俺なんかより色々不安なことあるよな。すっげー分かる!」
本気なのか冗談なのか……。空の言葉はつかみどころがない。どう受け取っていいのか分からず適当に返した。
「……涼って。馴れ馴れしいんですけど」
「いいじゃん。来月から兄妹なんだから。涼もお兄ちゃんって呼んでいーよ」
「呼ぶわけないし」
「ざーんねん」
全然へこたれていない。
どれだけ冷たいことを言っても空には無意味な気がして、一人意固地になっているのがアホらしくなる。だからって再婚に乗るかどうかは別問題。