空を祈る紙ヒコーキ
うっかり解けそうになった緊張を手放さないよう、気を引きしめた。
「とにかく、私は私のペースでやらせてもらうから」
「ちょっ、待ってよ…!」
空を無視して歩き出した。一瞬でも耳を傾けたら空のペースに引き込まれてしまう気がして……。
「ま、いっか。来月から毎日会えるし」
立ち去る私を見つめながら空がそんなことをつぶやいているだなんて、知らなかった。
それきり空は追いかけてくることも呼び止めてくることもなかった。
つくづく変な男だ。空ってヤツは。
木登りしたり木の上から紙ヒコーキを飛ばしたり、こっちが突っぱねてるのに懲りずに絡んできたり。今まで周りにいなかったタイプ。
……変なの。呼び捨てされて不愉快だったはずなのに、今は妙に胸がドキドキしてる。このドキドキは何だろ。
ああして実際会ってみても、空が義理の兄になるなんてやっぱり実感がなかった。
お母さんは本当に再婚するの?
考える時間もなく、春休みは慌ただしく過ぎていった。
引っ越しの荷造りもあったし、今度通う私立高校まで制服を買いに行ったり入学の準備をしたりしなきゃならなかった。