空を祈る紙ヒコーキ

 学力ランク的にはとても不満だけど制服はすごく可愛かった。県内でも評判がいいらしい。

 高校に通う楽しみといえばそれだけで、他は全く期待が持てなかった。制服なんてすぐに着慣れてしまうんだろうし……。

 たまにアミルから遊ぼうと誘われたけど、忙しいと言って断った。目標の高校には行けなかったけどアミルとは別の学校になったのでもう関わりたくない。このままフェードアウトするつもりだ。




「涼、準備できた?」

「うん、これが最後」

 四月になったばかりで暖かい。今日は夏原さん達の待つ新居へ引っ越す日。

 引っ越し業者のトラックに全ての荷物が運び込まれたのを見届けると、私と暁はお母さんの運転する車に乗った。

 お母さんは何度か新居を見に行っているので道も分かるらしい。車の中で今後のことを軽く説明された。

「お母さん今までは正社員の仕事をしてきたけど、夏原さんと入籍したらまたパート勤務に戻ることにしたの。肉体的負担も減るし子供との時間を増やすためにもそうした方がいいって夏原さんが言ってくれてね」

「じゃあ、これからはお母さんも体育祭の応援や授業参観に来れるんだね、嬉しい!」

「そうよ〜。お弁当も作ってあげられる」

 暁とお母さんは会話を弾ませていたけど、私はとても浮かれる気分になれなかった。

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