空を祈る紙ヒコーキ
そんな俺を見てクラスの皆は達観してると言ったけど、アイツだけは俺の本音を察してくれた。それでも馬鹿にしたり変に慰めたりはしなかった。
理解。それこそ最大の優しさで友情だった。
変に暑苦しくない厚意が嬉しかったし、アイツのためなら何でもできる気でいた。でも、結局何もできなかった。
中三の夏休み、人生が変わった。
家の中にいるのに近所の木々にはりついて鳴くセミの声がとてもうるさくて、電話の相手の話し声もうまく聞き取れないほど暑い夏の日。
後回しにしていた夏休みの宿題を面倒な気持ちで片付けていた八月中旬、スマホで訃報を受けた。電話してきたのはアイツの母親だった。普段明るく面倒見のいい人の悲しみを隠さない嗚咽が、訃報が真実であることを強調しているようだった。
クーラーが効いて涼しい室内は快適な温度なのに、手と膝が細かく震えた。スマホがフローリングの床に落ちてゴトンと嫌な音がした。
アイツがその決断を下したことに心当たりはあったのに俺は救えなかった。大切な人の守り方も知らなかった。
どうしてあんなことになってしまったんだろう。
手から滑り落ちたスマホをすがるように手に取りアイツのツイッターを見た。何か書いてあるかもしれない。でも、その期待は打ち砕かれた。一週間前には確かに存在していたアイツのアカウントは削除されていた。元から何もなかったかのようにきれいさっぱりと。