空を祈る紙ヒコーキ
どうしてそんな気分になるのか知りたくなった私は、空のことなど全く興味がないのに質問をすることで会話を引き延ばそうとした。ちょっとした好奇心。
「なんで高い場所?」
「紙ヒコーキ飛ばせるような高さがほしかったんだよ。でもあの日公園には子供がたくさんいたからジャングルジムは登れそうになかったし、近くにビルとかもなかった」
「部屋の中で飛ばしてればよかったじゃん。わざわざ外に出て木に登るとか、やっぱりズレてるって」
そうとしか言えなかった。紙ヒコーキひとつにそこまでこだわる空の気持ちが分からない。
私の顔を見て、空は困ったように笑った。
「だよな。人から見たら変なんだと思う」
「分かってるんだ」
「涼は聞いたことない?」
「何を?」
「願い事を紙に書いてそれを紙ヒコーキにして飛ばすと願い事が叶うっていうジンクス」
「知らない」
そんな話、聞いたことない。
もし有名なジンクスなのだとしても、そういう不確かなものを信じたいとは思わない。そんなことで願いが叶うなら私だってやる。
無意識のうちにため息をついていたらしい。私のため息を呆れと捉え空は苦笑した。
「紙ヒコーキじゃ叶わないと思う?」
「当たり前。そんなんで願いが叶うなら誰も努力なんてしないよ」
「……努力、か……」