空を祈る紙ヒコーキ
お母さんに言えない代わりに、鬱憤を暁にぶつける。
「アンタのせいでケチ呼ばわりされされたじゃん。腹立つー」
これがけっこうスッキリする。
「ごめんなさい……」
暁はまだ子供だから、こっちが強く出れば謝ってくる。お母さんほど口達者じゃない分、丸め込みやすい。まあ、これでさらにお母さんを怒らせるのだからプラマイゼロなんだけど。
「今日から夏原さんも一緒に暮らすっていうのに弟をいじめて……。そんな風に育てた覚えないわよ?」
お母さんが本気で怒り始めた。まともに取り合わず私は無表情で鰻を口にした。おいしいはずなのに鰻なんて別にもうどうでもいいと思った。
いつもならここで私はお母さんにビンタされ、暁が泣く。さすがに再婚相手の前で手はあげないだろうと思い強気に出てみたらその通りになった。お母さんは黙ったまま何か言いたげにこっちを睨んでいた。少しだけ気が晴れる。
こういう雰囲気に慣れていないのか、夏原さんはオロオロしながら暁に謝った。
「ごめんな、暁君。気付いてやれなくて」
「ううん、僕が悪いから」
そうだよ。アンタが悪いんだよ。暁に届くよう心の中で言った。全部全部私が悪いみたいにされるのはムカつく。
しょんぼりとうなだれる暁を見て笑いを我慢するのが大変だった。