空を祈る紙ヒコーキ
『気が向いたら』。その配慮が大人っぽいと思った。こういうのって口にされなくても強制なのかと思ってた。
「ありがと。フォロバするよ」
「嬉しい! ありがと。あ、ついでだし一緒に帰らない? っていっても校門までだけど」
どういうことだろ? 不思議に思っていると、愛大は説明した。
「アタシんち音羽台からすぐのとこなの。徒歩五分もない。ウケるよね。よかったら今度遊びにおいでよ」
「そうなんだ。近くていいね」
「それもあるけど、ここに来たのは制服目当てなんだ」
「え!?」
耳を疑った。愛大が言ったことを理解するのに数秒かかった。
「制服が可愛いからこの学校にしたの? 家が近いからとかじゃなく……」
「やっぱあり得ないよねー? あははっ!」
呆然とする私を見て愛大は笑い転げている。そこ笑うところ!?
「だって、高校生活って三年もあるしさー。地味なのより可愛い制服着て過ごしたいじゃん?」
「そんな選び方ある!? 学力レベルで選ぶよ普通っ!」
考えるより先にそう言っていた。
外見だけじゃない。愛大の内面は私の想像をはるかに超えて理解の及ばない領域まで達していた。
空も空で生徒会長なんかやってて軽音楽部でバンドまで組んでるし。
望んで入ったわけじゃない音羽台高校での新生活は、私の知らないもので溢れていた。慣れない刺激と想定外要素の連続に、めまいがしそうになった。
知らなかった世界(終)