空を祈る紙ヒコーキ
開かれていく心
言った瞬間ハッとした。愛大もキョトンとした顔でこっちを見ている。
学校にいる時にこうやって自分の気持ちを言えたこと、今まではなかった。言いたいことがあっても抑えるクセが身についていた。自分と意見の違う相手に意地悪されたくなくて。無駄にぶつかって気分を重くしたくなくて。
愛大の反応がこわくて目をそらすと、彼女は安心したようにため息をついた。
「ホッとしたよ〜。さっきからアタシばっかりしゃべってる気がしたから」
ホッとした……? 意味が分からない。もっと怒られるかと思った。
何を言っていいのか分からず戸惑う私に、愛大は何事もなかったかのように笑い混じりで話した。
「自分でも変だなって思う! 親も涼と同じこと言ってた。涼はやっぱり学力でここ選んだ?」
「うん……。滑り止めで受けただけだけど」
言った後、しまったと思った。愛大のおおらかさにつられてつい本音を言ってしまったけど、この高校を本命にしていた愛大を相手に『滑り止めだった』は嫌味だ。私にそういう意図がなくても相手は不愉快に思うに決まってる。
新しくできそうだった友達を早くも失ってしまうかもしれないと絶望した瞬間、愛大は大げさすぎるくらい大げさなリアクションを見せた。
「そうなの!? 滑り止め? マジで? よかったね」
「どこがいいの?」
「音羽台の制服って制服図鑑でもランキング上位なんだよ。それだけに着こなすのも難しくて他校の子達から似合う似合わないを厳しい目でチェックされるんだって。そういう意味でレベル高すぎるから入学諦める子も多いって中学の頃の担任も近所の人達も言ってたよ。そこを滑り止めにするって涼は勇気あるんだね」
「そんなことないよ」
本気でそう言ったのに、愛大は謙遜だと思ったみたいだ。