空を祈る紙ヒコーキ

 話したくないと思う私とは逆に、空は私のことに興味津々な様子で、また何かを訊いてこようとした。それを遮ってこっちから質問した。

「空はバンド組んで有名になるのが夢だったりするの?」

「んー。夢は他にあるんだ。バンド活動はホント楽しいし音楽は音楽ですごい好きなんだけどな」

 意外な返答だった。空のことだから将来アーティストになると迷いなく言うかと思った。

「アーティストじゃないんだね、夢」

「うん。元々バンドは友達に誘われてやってただけで、その友達も三年になる前に退部したから俺も続ける必要ないんだけどね。部員一人になっちゃったし」

「それバンドっていうよりソロなんじゃ……」

 力が抜けた。入学式の祝辞の場を使ってまで部活の宣伝をしていたのはそういうことだったのか。

「三年の主要メンバーが辞めたのをキッカケに後輩もどんどんやめてっちゃってさ。高二にもなれば進学のことも頭にあるだろうし仕方ないから泣く泣く見送ったけど」

「空はやめなかったんだ」

「うん。何でだろな。誘ってきた友達がやめたら俺もやめるつもりだったんだけど、やってるうちにこの部活に愛着が出てきたのかもしれない」

 愛着。私にはあまり理解できない感情だった。だからなのか妙に胸に響く。空の言葉だからかもしれない。
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