空を祈る紙ヒコーキ
「そういうの、いいんじゃない?」
無意識のうちにそう口にしていた。空は目を丸くして意外な気持ちをあらわにする。
「何その顔」
「いや、涼がそういうこと言ってくれるとは思わなくてビックリしたっていうか」
「もういい。忘れて。今のなし」
「ごめんごめん! からかうつもりはないよ、ホントにっ」
照れ隠しに怒る私を見て本気で慌てる空がなんだかおかしい。
「ありがと、涼。嬉しいよ」
優しい微笑を見せる空を見て、また胸がおかしな音を立てる。
空の夢が何なのか知らないしバンドのこともよく分からないけど、なぜか応援したくなった。直接的な協力はできないけど。
「涼、ボーカルとかやる気ない?」
「断る」
「ダメか〜! 残念!」
やっぱり誘ってきた。空は分かりやすいくらい落胆し「ホントに無理?」と甘えた目で見つめてくる。私が入学する前もこうやって色んな音羽台生に声をかけてたんだろうな。
きっぱり諦めさせるため、空にトドメを刺すことにした。自虐入ってるのがシャクだけど仕方ない。
「誘い方も落ち込み方もおおげさ。ボーカルならもっと派手で目立つ子勧誘しなよ。愛大とか適任じゃん。私なんかどう考えてもナイよね。地味だしガリ勉だしそれしか能ないんだから」
最近は勉強すら怪しいけど。と言いかけ口を閉じた。