空を祈る紙ヒコーキ
「そんなことない! 涼はもっと能がある」
変な日本語で空は反対意見を述べた。
「能? 例えば?」
「話してて楽しい」
満面の笑みで恥ずかしげもなく空は言った。
前までなら憎たらしい言葉で反撃できたのに、やっぱり今はそういう言動ができなかった。それどころか空の言葉に照れた。
「楽しい? 私と話すのが? 社交辞令うまいね」
皮肉の切れ味も悪くなる。最近の私は私じゃないみたい。空の顔をうまく見られない。
「社交辞令じゃない。楽しいよ。涼も同じ気持ちだったらいいなと思ってる」
「だからってボーカルに誘うかな。話してて楽しいのと歌って関係なくない?」
「あるよ」
空は自信たっぷりに言った。
「一緒にいて楽しい。そういう相手とは楽しいバンド活動ができるから」
「そういうのよく分からないけど私音楽の知識皆無だから。諦めてよ」
ピアノもギターもドラムも触ったことない。歌なんてたまにアミルと行くカラオケで歌った程度だし音楽の成績も普通だった。そっち方面の知識もない。
「分かった。諦める。無理言ってごめんな」
苦く笑い、空は自分の音楽経験を語った。
「俺もギター触ったの高校入ってからだったんだ。今も下手だけど上手な友達に教えてもらってたらそれなりに弾けるようになった。ピアノより簡単なんだ。あくまで俺の感覚だけど」
「そうなの? それで弾けるってすごいね」