空を祈る紙ヒコーキ
素直に感心した。楽器って子供の頃から弾いてないと飲み込みにくいって聞いたことがある。ギターとピアノの違いが私にはよく分からないけど、空は高校でギターを弾けるようになった。
「正直もう無理って思うこともあったけど、やってたら何とかなるもんだなって」
やれなかったことができるようになる楽しさは分かる。解けなかった問題を解けた時、私も嬉しかった。
それなのに空の夢は別にあって、アーティストになることじゃないらしい。空の夢は何だろう?
訊いていいのか分からず迷っているうちに私達の住む家に着いた。それぞれの自室に引っ込み私服に着替えるとどちらかともなく廊下に出た。空の部屋も二階で、私の部屋から見て廊下を挟んだ斜め向かいにある。
「ギター見る?」
空が自分の部屋に手招きした。男子の部屋に入ったことがないからか、突然緊張した。
「うん……」
ここで断るのも変かと思い平然を装った。空の部屋の間取りは私の部屋を反転させただけで全く同じだった。違うのは置いてある物やその色彩。
透け感のある水色のカーテンが風に揺れていた。ギターは壁に立て掛けてあり、勉強机には受験生用の参考書が重ねてあった。
チェストの上には大きなコルクボードが吊るされていて、そこには友達と撮ったたくさんの写真が飾られている。そんな気はしてたけど空はやっぱり友達が多い。中央には中学時代のものらしき空と一人の男子が肩を並べて笑顔で写るひときわ大きな写真が置かれていた。特に仲が良い友達なんだろうか。飾ってあるのはその人との写真が一番多い。