空を祈る紙ヒコーキ

 ギターと写真があること以外、誰が見ても分かる受験生の部屋だなと思いつつ視線をベッドに向けて驚いた。ベッドの上には何十枚もの紙が折り重なるように置かれている。シーツの色を隠してしまうほどにたくさん。

「何これ」

「ビックリした?」

 空はイタズラな瞳で私の顔を覗き込んだ。ギターを見るはずが別のものに意識を持っていかれた。

 私は足元に落ちていた一枚の原稿を手に取った。中学生くらいの男子が街中を歩く様子が描かれている。マンガはほとんど持ってないし数えるほどしか読んだことがないけど、これがマンガの原稿であることは分かった。

「夢ってこれ?」

「うん。マンガ家になりたくて中一の頃から投稿生活してる。今朝は早く目が覚めたから今度出版社に応募する原稿の見直しをしてたんだ」

「うまいじゃん、絵。意外」

「ありがと。でもまだまだ受賞には程遠いんだ。手前の賞なら何度か取れたけどそれじゃデビューはできないし。なかなか現実は厳しい」

 空は苦笑した。

 マンガにほとんど触れてこなかった素人の判断だけど、空の絵はプロ並みに上手だ。拾った原稿は一枚だけなので物語の内容全部は分からないけど、このレベルなら普通に本屋で並べられていてもおかしくない。

 ベッド脇に二つ並んだ本棚。中に収まっているほとんどがマンガの単行本だった。私が持っている参考書の数より多い。マンガの合間に小説やイラスト集なども何点かあった。プロのマンガ家になるため色んな創作物を見て研究していたのかもしれない。

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