空を祈る紙ヒコーキ
料理自体はわりと好きだから自分のお弁当でもこだわって作る。制服に油が飛ばないようエプロンをし、適当な食材を冷蔵庫から取り出す。一週間分のおかずをまとめて作り小分けして冷凍室へ。これで明日からは楽できる。
全てのおかずを作り終わり今日分のお弁当を詰め終わると、ダイニングと廊下を隔てている扉が開いた。
朝食の用意をするため夏原さんが起きてきたんだと思った。寝ぼけまなこのその顔を見て、心臓が飛び跳ねた。夏原さんではなく空だった。
「涼。もう起きてたの?」
「空こそ早くない?」
「喉渇いて」
空はまだTシャツにハーフパンツの格好だった。冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのペットボトルに口をつける空の姿を横目で盗み見た。
「いい匂い。涼が作ったの?」
「うん。お弁当用に」
「すごいな。父さんのよりうまそう」
昨日の会話などなかった感じで、空はテーブルの上に並んだ料理の皿を眺めた。ホイコウロウ、チンジャオロース、唐揚げ、春巻き、ポテトサラダ、ブロッコリー、ゆで卵。
「こんな朝から大変だろ。父さんに頼めばいいのに」
「いいよ。慣れてるから。朝も夜もご飯作ってくれる夏原さんにそこまで頼めない」
「そんなの父さんは気にしないよ。母さんはお弁当作ってくれないの?」
「作ってほしいけど無理。見てたら分かるでしょ? お母さんは暁しか甘やかさないの」