空を祈る紙ヒコーキ
「涼だって甘えたいのにな」
私の気持ちを代弁し、空は皿の上のおかずを自分の弁当箱に詰め始めた。
「何してるの? これは私のでっ」
「俺も今日から弁当自分で作る。あ、今日はさすがに時間ないからここにあるのもらってっていい?」
「別にいいけど」
「明日からは交代で作ろ」
どうしてそんなことを言い出すのか分からなかった。いつだったか、夕食の時に空は言っていた。毎月夏原さんから昼食代をまとめてもらっているのでそれでパンを買ったり学食を利用していると。夏原さんはお弁当を作ると言ったけど、空は「父さん仕事でも料理作ってるんだから家では休みたいでしょ」と、気を遣っていた。そうでなくてもお金があるのにお弁当作りなんて面倒なことをしたがる理由が分からない。
「空は学食とか使えばいいじゃん。お弁当は私だけでいい」
「やらせてよ。大丈夫。料理はけっこう自信あるから」
それは知ってる。この家へ来た日、空は私にオムレツをはじめ色んな物を作ってくれた。簡単に早く作るのにどれもおいしくて、同じ高校生がここまでやれるんだと感動した。
正直交代でやってくれると助かる。料理は苦じゃないとはいえ私だって朝はゆっくり寝ていたい。
「分かった。そうする」
空の強引さには困ったけどその優しさが嬉しくもあった。きっとお母さんにお弁当を作ってもらえない私に同情したんだ。そこに恋愛感情はカケラもない。簡単に想像できて気落ちしかけ、考えるのをやめた。
同情でも何でもいい。空にかまってもらえる時間を大事にしよう。