空を祈る紙ヒコーキ

 そのうち面倒だと言われるのも覚悟していたのに、空は飽きることなく交代制のお弁当作りを続けてくれた。一週間ずつ交代で私達はお互いのお弁当のおかずを作った。

 おいしいと言われると嬉しかったし、学年の違う空が昼休みにはお弁当を見て私のことを思い出しているのだと思うとくすぐったい気持ちになった。


 四月が終わる頃、私は愛大と一緒に行動するのが当たり前になっていた。別の人のところへ行かれることも少し覚悟していたので入学式だけの関係に終わらなかったことにホッとした。

 昼休みの教室で私のお弁当を見た愛大は物欲しそうな顔をした。

「今日はどっちの?」

「私の」

 どっちのとは、空か私、どちらが作った物なの? という意味だった。いつものやり取り。

「こんな料理上手なお兄ちゃん羨ましいよ〜」

 愛大もたまに手作りのお弁当を持ってくるのに、なぜか空手製のお弁当を物欲しそうに見る。

 空が作るおかずは調味料に日本酒やワインを使ったり材料に小麦粉をまぶしたりするので見た目は普通でも味がとても凝っている。私も料理は好きだけどお弁当作りにそこまで手間をかけたりしないので出来栄えの差がはっきりしていた。

 この間の昼休み、私のお弁当を見た愛大は目ざとく作り主が違うことに気付たので、私は仕方なく兄の存在を話した。でもさすがにその兄と血がつながっていないことや同じ学校の上級生であること、親の再婚のことまでは話せなかった。愛大は「親の事情に巻き込まれる日常」とは縁のない世界で生きているように見えたし、変に家庭のことを話して引かれたくなかった。

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