空を祈る紙ヒコーキ

 そういう気は遣うものの、愛大は話していてもっとも楽な相手だった。私達は見た目も性格も正反対だ。周りのクラスメイトもそう言ってくるし私もそう思うけど、それでも愛大とは気が合うし話していて楽しい。愛大はどう思っているのか知らないけど、私は勝手に親しみを感じている。

 愛大はコンビニのサンドイッチとココナッツミルク入りの甘ったるそうな白い飲み物を交互に口にした。ココナッツの栄養成分は美肌にいいらしい。

「涼は料理が趣味なの?」

「趣味ってほどじゃないけど、好きは好き」

 愛大はやっぱり魅力的だ。人に緊張感を与えない自然な接し方。気さくな態度。男女関係なく誰とでも仲良くしているのもうなずける。私にはないものばかりで時に羨ましいけど不思議と妬みの感情は湧かなかった。むしろ憧れる。

 でも、最近の愛大は入学した頃に比べるとテンションも低く、元気に振る舞ってはいるけどどこか無理しているようにも見えた。知らないうちに私が何か不愉快になるようなことをしてしまったのかと心配になったけど訊く勇気がないので気付かないフリをした。今日の愛大は特に悩ましげな顔をしている。

「どうしよっかなー、部活」

「やるの? もうすぐ五月だよ」

「そうなんだよねー。入る子はとっくに入部届出して部活やってるよね。早くしないとって思うんだけど迷ってて、なかなか決められなくてさ〜。どうしよう……」

「何部?」

「軽音楽部。入学式で生徒会長が宣伝してたけどまだ誰も入部してないんだって」

「愛大、バンドに興味あるの!?」

 あからさまに驚いてしまった。たしかにどのアーティストが好きとかあの曲はオススメだという話は何度か聞いていたけど、雑談の一環だと思っていた。

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