空を祈る紙ヒコーキ
先週化学の授業でやった抜き打ちテストで百点を取った私は、先生に感激されクラス中にテストの点を公表された。自分では褒められるほどのことと思えないのでただ恥ずかしいだけだった。この学校の生徒にとっては難しいのかもしれないけど進学校の生徒なら全員が満点を取れる、そのレベルの簡単な問題ばかりだった。
その日以来、愛大にとって私は頭がいい子というイメージになったらしい。
愛大はたしかに勉強ができない。そういう意味では馬鹿だ。中学時代もそうだったんだろう。入学後すぐに行われた数学の抜き打ちテストで十五点を取った彼女を見た時、こんな馬鹿が本当にいるんだと思った。こんな人と関わっていたら私まで馬鹿になると思い、一瞬距離を置こうかと考えたりもした。
でも、結局こうして一緒にいる。それはクラスで一人になりたくないからってだけじゃない。愛大といるのが何より楽しいからだ。
「愛大だってバンドとかキーボードやれるじゃん。すごいよ」
嫌味じゃなく素直に褒める言葉が出てくる。中学の時には考えられないことだった。アミルに対してこんな風には思えなかった。
「アタシも真面目にやってみようかな、勉強」
私の言葉に照れたのか、愛大は私の机の中から午前の授業で配られた歴史のプリントを取り出した。愛大も同じプリントをもらっているけどすでにカバンの中にしまってしまったから出すのがダルいと言い私のを見たがった。
「涼のプリント見たら頭良くなるかも!」
おかしなことを言ってプリントを見つめる愛大。なめらかそうな指先には可愛いマニキュアが塗られている。勉強なんかできなくても愛大は今のままで充分いいんじゃないかと思いつつその様子をしばらく眺めていたけどトイレに行きたくなり、私は席を立った。