空を祈る紙ヒコーキ
バンド経験者は皆こんな感じなの? 快活というか。空も気さくだし。
アパートみたいな一室には靴を脱ぐ狭いスペースがあり靴箱もあった。室内にはひととおりの楽器や名前もよく分からない機材、お菓子や冷蔵庫まで置いてある。思っていたより綺麗で埃もなかった。マメに掃除されているみたい。
窓側を向いて奥のテーブルに座っていた空は出入口を振り返った。私と愛大の顔を交互に見て空は目を見開いた。
「涼……!」
「生徒会長と涼って知り合いなの? えー!?」
愛大も大げさなくらい驚いて私達を見た。
「知り合いも何も、兄妹なんだ」
隠すことなく空はサラッと言った。愛大にあっさりバレた……。
「そうなんですか!? そういえば生徒会長の名字も夏原でしたっけ? ここ最近で一番ビックリですよ!」
「そうなんだ。涼から聞いてない?」
「初耳ですよー! 涼、言ってくれたらいいのにー!」
言えるわけない。心の中で言い返し私は曖昧に笑った。
「まあ、座ってよ」
私の気を知ってか知らずか、空はそれ以上家の話には触れず冷蔵庫を開け、私達を適当な場所に座らせた。私達のために用意してあったわけじゃないだろうけど、空は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを二本取り出し愛大と私に手渡した。
「ありがとうございます。いただきまーす」
「こっちこそありがとう。入部希望ってホント? この通り今は俺しかいないけど」