拗らせ女子に 王子様の口づけを
『大阪から来ました野々宮奏輔です。元々生まれは此方なので地理に悩むことがないので良かったです。初めての方も多いと思いますが、宜しくお願いします』


相変わらず優等生な挨拶を終え、ニコリと微笑む奏輔に、あちらこちらから黄色い声が控えめに聞こえる。

180センチの長身に、少し茶色掛かった長めの髪をキッチリ後ろへ流す。ちょっと目尻の下がった一重の薄目の瞳は笑うとニコチャンマークのように弧を描く。

私の知っている限り、学生時代全般『王子』の称号を常に与えられていた人だった。

本当は私なんかが好きになって貰えることが無いことも分かってる。
いつも彼の隣にいるのはみのりのような綺麗なお姉さんだ。
だけど、万が一、億が一、珍味が気になるときが来るかもしれない。箸休めによそ見するかも知れない。
その時に後悔したくない。

珍味結構!
箸休め上等!

そんな気合で片想い歴だけを更新していく。


みのりの言ってることも分かる。
だけど、こうやって改めて顔を見ると
『あぁ、、、好きだなぁ』
って、再確認しちゃうのよね。
やっぱり格好いい。
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