拗らせ女子に 王子様の口づけを

「お客さん、着きましたよ」

タクシーの運転手さんに声をかけてもらって慌てて意識を呼び戻した。
外を見ていた筈なのに、家に近づいてた事に全然気づかなかった。

「ありがとうございます」

お礼とお金を払ってタクシーを降りて、家に向かう。

一日中締め切った部屋のなかは、暑いどころじゃなくて、多少なりとも飲んできたこの後では気持ち悪さも伴って、そのまま部屋の真ん中で座り込んでしまった。

テーブルの上のリモコンをとってエアコンをつける。

急激に冷えて体がぶるりと震えるから、
あっ、お風呂。
最近シャワーで済ませてたけど、今日はちゃんとお湯を張ろう。

お風呂を掃除して、お湯をためる。
体を温めるようにゆっくりお湯に浸かって……って、熱い!
夏だし。
無理無理無理。
熱いわっ。

「アハッ」

なんだ。
大丈夫だ、私。
いつもと同じように日常を過ごしてる。

お風呂に入って、化粧を落として、コンタクトも痛いから外してさ。
きちんと脱いだ服も片付けて、作ってある麦茶を飲んで、お布団に入る。

明日……日付が変わってるからもう今日か。
朝はいつもよりゆっくりしよう。
休みだから起きる時間も気にせずに、飽きるまでゴロゴロしよう。

日曜日はみのりがお祝いしてくれる。
ケーキを持って遊びに来てくれる予定だ。

今年のプレゼントは何だろう。
毎年みのりのくれるプレゼントは外れがない。
いつも私の喜ぶものをチョイスしてくれるから、楽しみだ。
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