拗らせ女子に 王子様の口づけを
ベットに入って目を閉じる。
脳裏に浮かぶのは奏ちゃんが私にネックレスを付けてくれた光景だ。
プラチナのそれはこんな気持ちの中でも外すことを躊躇わせて。
『奏ちゃんが付けてくれた』そんな事実を無くしたくなくて、お風呂に入るときも外せなかった。
手を動かしてトップに触れる。
ハートを握りしめるようにぎゅっと持つと目の奥がツキンと痛み目頭が熱くなる。
もう奏ちゃんの事追いかけられないんだな。
自分で決めたこととはいえ、出来る気がしない。
「駄目じゃん」一人ごちて、乾いた笑いを自嘲ぎみに吐き出す。
じわりじわりと溜まりだす涙が頬を伝い、枕にシミを作り続ける。
誰もいない私だけの部屋なのに、何故か声を押し殺して私は泣いた。
漏れる嗚咽も鼻をすする音すらも、『私』は聞きたくなかった。
泣いている事実を認めたくなかった。
だって泣いてしまえば私は奏ちゃんに失恋したことになる。
そばにいる理由がなくなる。
ただの屁理屈で、現実逃避で、そんな事をしても事実は変わることが無いことも全部分かってる。
それでも私は声を出すことが出来なかった。