拗らせ女子に 王子様の口づけを
「じゃあ余計にあの日は気疲れしたんじゃないですか?あんな言い捨てて私も帰っちゃったし、本当にごめんなさい」
だってある意味修羅場だ。
あの時の秦野さんの雰囲気は、ものすごく私を気にしてくれてたもの。
「うーん。気疲れとかは大丈夫なんだけど、奏輔のバカさ加減にイライラしてたわ。鈍感にもほどがあるわよね」
「……あれね、きっと鈍感じゃないんですよ」
「は?えっ?何?どういう事?」
勢い付けにゴクリとスプモーニを飲む。
「……自惚れじゃなくて、奏ちゃんはきっと私の事が好きだと思うんです。
普通に。
私達はお互い一人っ子だから本当の兄妹の感覚が分からないんですけど、でも誰に聞いたってあんなシスコンの兄妹何処にもいないんですよね」
グラスの汗をお手拭きで拭きながら愚痴のように呟く。
「だって、私に男の子の友達がいたら威嚇するし、告白されても難癖つけて断るように仕向けるし、ナンパなんてもっての他です!女友達とでも遊びの行き帰りは出来る限りの送り迎えしようとするし、そんな兄がいたら普通に嫌ですよね!?」
「………………うわぁー引くわ……」
「そりゃね、私は昔っから好きだったから、束縛とか独占欲とかって勝手に解釈して奏ちゃんの言うとおりにしてきたんです。だって、好きなんですもん。だけどその度に妹って言われて、自分は好き勝手彼女つくって、もう本当嫌だ……」