拗らせ女子に 王子様の口づけを
グラスに残っていた少量を飲み干し、「すみませーん。カシスオレンジ下さい」と通りすがりの店員さんに頼む。
「普通そこまでしませんよね?で、それは大学を卒業するまで続くんです。でも就職して地元を離れるとさすがにそこまで出来なくなるので多少落ち着いたんですが、定期的に確認が入るんです。
何があったとか、彼氏ができたかとか。
終いには家族ぐるみの付き合いなんで親に聞いたりとか。
だからうちの親なんて奏ちゃんと付き合ってると思ってますよ」
深いため息を吐きながら言う台詞に、秦野さんが堪えきれないように吹き出した。
「アハッ、クククク、奏輔本当バカ。なんなのその束縛男。アハハハハハ」
中々おさまらない笑に私も釣られて笑顔になる。一緒になって笑って飲んで、落ち着いた頃「あのね、」と秦野さんが話し出した。
「昔、奏輔と付き合ってた頃から大事にしている幼馴染みの女の子がいることは知ってたのよ。早川さんの事だったのね」
目尻に溜まった笑い涙を拭き取って、今度はちょっと眉を寄せて話し出すから私は首をかしげた。
「結構酷かったのよ?遊びにいっててもその子にやれお土産やプレゼントや。デートをほっぽりだして帰ってったこともあったわね。仮にも彼女に対する扱いじゃないわよね?」
うわー。
そりゃ駄目だよ奏ちゃん。
「歴代の彼女達も同じような扱いで、別れたんじゃないかな。ちなみに私もね」
ふふふ、と思い出して笑う。
ちなみに私は苦笑しか出来ない。
「付き合ってるときからその女の子に嫉妬もしたし、奏輔を何度も疑ったけど、やっぱり『妹』だって言うのよ。
本当バカ。
私だったら弟にそんな事されたらぶん殴るわね」
思わず目を見開いた。
姉弟って凄い。