拗らせ女子に 王子様の口づけを

しまった。段々やさぐれてきた。
でも、やさぐれても仕方ないよね。
「すみません、キール下さい」勢いよく飲み続ける私に秦野さんがとめにかかる。

「ちょっと、大丈夫?」
「はい。大丈夫です!ね?明日からお休みだし秦野さんも飲みましょ?
すみませーん。シャンディ・ガフもお代わりください」

大丈夫。
これくらいじゃ酔いませんよー。
まだまだイケると豪語して。


「ねぇ?あれから奏輔から連絡はあった?」

躊躇いがちにそう聞かれ、私は首を振る。
「ありません。忙しいみたいで顔もみてないんです」

秦野さんは気まずそうに頷いた。

「奏輔の事、どうするの?
……っ、ごめん。私がここまで聞くのも可笑しいわよね」

「そんなっ」首を大きく左右に振りながらそんな事ないです、と強く言う。


「色々考えたんですが、すっぱり諦めます」

「えっ!?」

「私かれこれ15年?もっとかな。それくらい拗らせてきたんです。すぐに忘れたり、他の人をなんて絶対無理なので、そこはもう仕方ないかなって思って。
だけど、今までみたいに側にいるのを止めようと思ってます。
少なからず幼馴染みとして『妹』として私も甘えてた分もあるので、これからは同僚として軽い付き合いに徹するつもりです。だって、私は妹じゃないもの」


ふふふ。と思わず笑いが漏れる。
「諦めるのは、彼女になることです。彼の特別になるのはもう諦めます。
だけど、私はずっと奏ちゃんの事が好きなんだろうな。それはもう刷り込みも入って、仕方のないことなんだろうな」


悲しかったのは、奏ちゃんに好きになってもらえなかったことじゃない。
だって彼は私の事は好きだもの。

彼の『特別』になれなかったことだ。
妹としての特権より、何より欲しかったのは『恋人』として側にいたかった。

叶わなかったけど。




以外とすぐに私は自分自身と折り合いをつけることが出来た。
求めるから辛くて。
期待するから悲しかったんだ。


だけど、それらがなくなった今、結構スッキリ頭の中がクリアになって、落ち着くところに落ち着けた。
勝手に好きでいようって。
私、頑張ったもん。
もう奏ちゃんなんて知らない。


求めなきゃいいんじゃん。
期待しなきゃいいんだよ。
奏ちゃんに振り回される日々はおしまいして。

でも、側に居るとさすがにまだ胸は痛むだろうから、遠くから思ってるくらいいいよね。

みのりには「前向きなようで、超後ろ向きだからね」と言われた。
そうかな?
そんな事ないんだけどな。




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