拗らせ女子に 王子様の口づけを
思わず睨んで見上げると、バカにしたような言い方をするくせに、その笑い方はやけに楽しそうで。
目を細めて優しく笑う三矢に再びドキリと胸が鳴った。
居心地悪く視線をそらし、ドキドキする胸に素知らぬふりをしてこのままじゃダメだと話を変えた。
「そういえば、三矢はなんで駅にいたの?」
三矢も私の心境なんて全く気付くことなく話を続けてくれた。
良かった。
ほら。
一瞬鳴った胸も、気のせいだと言わんばかりにすぐに落ち着いた。
「あぁ、まる太で飲んでたんだよ」
「あ、そうなの?明日からお休みだしねー」
「それだけ?」
「何が?」
「なんで俺があそこにいたのかとか考えねぇの?」
「まる太の帰りだからでしょ?」
「一人で?」
「解散、早かったんだね」
「……もういい。お前が鈍感とかの問題じゃないことは分かった」
「なんの話よ」
盛大なため息をつかれ、何故か睨まれた。
なんなのよ。
「あの、さ。お前休み実家帰るのか?」
「あーーーー。うううん、今年は考えてない。みのりと買い物でも行こうかな」
「じゃあ、1日空けろよ。ちょっと俺に付き合え、遊びにいこうぜ」
「何でよ、暑いし嫌よ」
「暇してんだろ?いいじゃん」
「えーーー何すんの?」
「まだ内緒。ほら、送ってやってんじゃん。礼だ、礼」
「頼んでないし!」
「ハハッ、決まりな」
「何でよっもう。仕方ないなぁ」
駅で会ってから、引っ張られるように改札を潜りホームへたつ。
タイミングよく来た電車に乗って、自宅最寄り駅に着いた。
当たり前のように一緒に降りそうになる三矢に「ここまででいいから」と手で遮ったのに「あほか」とその手を掴まれてホームへ引っ張られた。