拗らせ女子に 王子様の口づけを
ここまでは、とにかくまぁ日常で。
三矢が強引ぎみに過保護な事も、何度断っても家まで送ってくることも、さっきまでの会話だって、何も変わらないいつもの日常だった。
そりゃ慣れない距離感に妙な緊張感が走ってドキドキしちゃったけど、会話が始まればすぐに治まったしさ。
男の子に馴れてなさすぎでしょ私。
どんだけ奏ちゃんしか見てなかったの。
だ・か・ら、この非日常の状況に着いていけなくて、思わず声を荒げて叫んでしまった。
「は、離して。ちょっ、三矢!ねぇこの手、離してよ!」
力の限り手に力を入れて、ぶんぶん振り回すも三矢の手は私の手を離すことなくずんずん歩き続ける。
慌てる私を見ることもな前を見て、
「シッ、お前何時だと思ってんの?近・所・迷・惑!」
なんて、シレッと言い放つ。
グッと言葉につまり黙ってしまうと力強く引っ張られ、脇道に連れ込まれた。
ほんの2メートルほど入っただけで街灯も届かなくなりその薄暗さに不安になる。
「ちょっと、三矢!」
近所迷惑と言われた手前、声を落として三矢に非難の声をあげた。
その声に振り返った三矢は、さっきまでおどけた様子を見せていた表情が一変していて眉を寄せて苦しそうで。
「どうしたの?気持ち悪い?」
飲みすぎて体調不良になったのかとしか思えなかった。