拗らせ女子に 王子様の口づけを

真剣な表情で見つめられ続け、さすがに居心地悪い。
こんな暗がりで、誰にも見られないような路地に入って、時間も遅い。
握られていた手を振りはなそうと動かすと、勢いよく引っ張られ、気付けば三矢の腕の中にいた。

目の前には広い胸板で、奏ちゃんとは違うムスクの匂い。
抱き締められていると気付いたのは、三矢が声を出したときだった。

「……もうちょっと危機感持てよ。俺がこんなことするって考えもしないわけ?」

いつもより低い声音で苦しそうに呟いた。

その台詞にハッ、としてやっとこの状況を頭で理解して。
「えっ?三矢?は、離してよ。どうしたの?」


腕は緩まるどころか、強く抱き締められた。
「あのさ、はっきり言わねぇと絶対早川は気付きもしないから言っとく。
……俺、お前が好きだ」

「!!!!……っ、」

「お前が誰を見てるかも知ってる。だけど、好きなんだ。返事はまだいらない、ちゃんと俺の事、見て?」

「っ、」

「男として、俺を意識しろよ」

「っ、……み、三矢」

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