拗らせ女子に 王子様の口づけを

さ、沙織って!沙織って!
な、名前っ!!!!

「み、三矢っ!!なんか恥ずかしいっ!」
「あほか!俺のが恥ずかしいわ!」
「だって、だって、名前で呼ばれるなんて奏ちゃん以外で初めてなんだものっ!」

両手で頬を押さえた。
きっと私顔、真っ赤だ。

「~~~~~~!!!!!っ、ヨシ!帰るぞ」

「ふぇ?な、何突然?」

帰ることに異存はありませんが、どうした?

「駄目だ。このまま一緒にいたら俺、止めれる自信ないわ。今日はもう帰るぞ」

ベリッと音が聞こえるほど勢いよく体を剥がされて、手を繋ぎ直して歩き出した。

「ん?……う、うん……帰るのはありがたいけど、何を止めるの?」
「っ、い、いいんだよ。お前は気にするな」

分かった!
と、言わんばかりに力強く頷いた。
だって、これ以上は無理!
完全にキャパオーバーだ。

気にしなくていいなら何も考えたくないのが本音だ。
だがしかし、これは待て!

「ね、ねぇ三矢。手、離してよ。絶対汗かいてる。なんか嫌だよ。んで早いよっ」

ぐいぐい引っ張られながら家までの道を競歩のように歩かされる。
早いって!

「あぁ悪い。だけど手は離さねぇぞ。俺はお前に触れてたい」

「なっ、何をっ!!!」

「言ったろ?覚悟しろって。もう隠すつもりもないし、ネタバレすると今日駅で会ったのも偶然じゃないから」

「は?」

「お前、出掛けるときは必ず長瀬さんに連絡するだろ?」

「う、うん」
だって怒られるしね。

三矢が立ち止まり、振り向きながら私を見る。

「長瀬さんから早川を送れって連絡来たんだよ。なんか試されてる?俺。クククッ。でも、良かった。送れて」


なんとっっっ!!!

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