拗らせ女子に 王子様の口づけを
仕事はじめの今日はいつもより早く会社に着いた。
給湯室の片付けとお茶の準備をして軽く掃除をする。
休み中にたまったファクスの整理やらメールチェックをしているだけで始業前になっていた。
ドキドキしながら三矢が出勤するのを待った。
普通に、普通によ。
心のなかで呪いのように繰り返し、なんでこんなに緊張しなくちゃいけないのかと逆ギレしてしまう。
あぁ、駄目だ。
もう嫌だ。
なんとなく手を胸に当てながらデスクに額をのせてつっぷする格好になる。
緊張し過ぎて胸が痛い。
「おい、早川?どっか痛いのか?」
頭上から届いた声に体がビクリと過剰に反応してしまった。
「うわっ、み、三矢、、お、おはよう」
ガタリ、と音をたてながら振り向いて顔を確認したあとそっと視線をそらした。
駄目だ。
もう本当に駄目だ。
「おう、はよ。どうかしたか?体調悪い?」
そういって私に視線を感じる。
悼まれない気持ちを持て余しながら視線を合わせずにいると額に温かな温もりを感じた。
へっ?
「熱はないみたいだな。大丈夫か?」
本当に風邪かと心配している三矢の手が額に当たっているんだと理解する。
はっ!!?
「ひゃっ、っ、なっ、、、イタッ!」
ビックリして、頭を後ろに仰け反って、椅子も一緒に退いた後そのままデスクの角に
肘をぶつけてしまった。
肘を抱えながら、う━━━━━━━っ、と小さく唸る私の一連の行動を見ていた三矢がフッと笑って、
「アホだ」
と目を優しく細めて呟いた。