拗らせ女子に 王子様の口づけを
二次会に奏ちゃんは行かない?
三矢に甘えてばかりも悪い。
だけど、この流れで二次会に行かなかったら確実に奏ちゃんと帰ることになる。
こういう時の奏ちゃんはかなり強引だ。
でも、まだ……まだ普通に出来ないよ。
そばにいると、冷静になんてまだなれない。
声を聞くだけで。
『沙織』そう名前を呼ばれるだけで、長年躾られた犬のように尻尾を降って飛び付いてしまいそうになる。
どこまでその声に従順なんだろう。
こんなにも好きが溢れてくる。
駄目だ、泣きそう。
少しずつでも離した、離そうとした距離が、感情が一瞬で巻き戻される。
もう、本当バカ。
何回繰り返すのよ。
笑え。
依存しないように、ちゃんと自分で立ち直るように。
「……奏兄。私、今日は濱本主任ともう少しお話ししたいしまだ残るよ。
帰りのことは心配しないで?
それに、そろそろちゃんと兄離れしないとね!」