拗らせ女子に 王子様の口づけを

じんわりと瑞希さんの優しさに浸っていると、設計のフロアに奏ちゃんがやってきた。

最近妙に顔出してるな、奏ちゃん。
視線を合わすことは恐くて出来ないけれど、なんとなく視線を感じる。

自意識過剰じゃなく、感じる。
余計に怖い。

ドキドキドキドキ。
ヤバすぎる。

視線を感じるだけで話しかけて来ることがないから、お互いどうしていいのか図りかねてるんだろうけど、もどかしすぎて発狂しそうだ。

今日は特に会いたくないかもしれない。


そそくさと、奏ちゃんから逃げるように巣(会議室)に向かう。
今日さえ乗りきれば、大丈夫だから。

そう思って、バレないように姿を眩まそうと奏ちゃんの位置を確認するためにチラリと目を向けた瞬間視線がバッチリ合ってしまった。

ヤバイ。
そう思ってももう遅かった。

あからさまに視線を直ぐに剃らし、そのまま会議室に逃げ込む前に奏ちゃんに捕まってしまった。

「沙織!」

少し苛立った奏ちゃんの声。
無視してそのまま会議室へ行けばいいものの、長年の習慣には逆らえない。
パブロフ犬も真っ青だ。



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