拗らせ女子に 王子様の口づけを

少しだけ静まり返った中、周りの視線なんて気にも止めないで奏ちゃんはツカツカと私のところまで近づいた。

あぁ、足音すらも恐ろしい。

直立不動に固まって奏ちゃんに背を向けたままだった私の体を引き寄せて徐に顔を覗き込むと眉間にシワがよる。

もうだめだ。
━━━━━バレてしまった。




子供のように硬く目を閉じてプイッと顔を背けた。

「…………沙織、自覚は?」

「━━━━━━━━ある」

その会話1つで全てが理解できてしまう。
だから嫌なんだ。
幼馴染みってやつは。
距離が近すぎて隠し事すら出来やしない。


「三矢、ちょっと来い」

そう言って、私には背中を押しながら会議室へ入るよう促した。
数歩歩いて立ち尽くしていたら、椅子を引いて座るように視線で合図する。

何もかも、言葉がなくても分かってしまう。
それが今は少しだけ切ない。


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