拗らせ女子に 王子様の口づけを

「すみません。どうかしましたか?」

直ぐに三矢が入ってきて、パタンと扉がしまる。
椅子に座って俯いたままの私に、腕を組んで不機嫌そうに立つ奏ちゃん。

どうみても、親に怒られる子供のようだ。

「━━━三矢。午後イチで俺の顧客の現場見学だったよな?」

「はい、そうですが?」

「午前中は?何か出る用事あるか?」

「いえ、今日はありません」

「沙織、午前中に終われるか?」

「━━━出来ます」

たんたんと話す奏ちゃんに訳がわからないと頭を捻る三矢。
そりゃそうだ。
何の説明もしていないんだから。

「何か、ありましたか?」

「………………沙織は熱があるから、午後の打ち合わせの前に家まで送ってくれないか?」

「は!?」

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