拗らせ女子に 王子様の口づけを
ポーンと、営業部に着いて扉が開く。
奏輔が微妙な顔をしてこちらを見ていたが、意識的に視線をそらせた。
「お疲れ様です」
聞き慣れた声がして、顔を向けると三矢が図面を抱えて乗ってきた。
「野々宮さん、降りないんですか?」
三矢に指摘されて、奏輔もそのまま降りていった。その背中に「お疲れ様でした」と声だけかけた。
再び上昇したエレベーターの中で、三矢が頭を傾ける。
「なんかあった?」
「何も、無いわよ。いつものことよ。私たちには何にも無いの。手伝おうか?図面、持つよ?」
そう話を切り上げた沙織は、本当にいつも通りの表情だった。