拗らせ女子に 王子様の口づけを
※ ※ ※
『梨花』さんとの関係を確認する勇気もなく毎日が過ぎていった。
避けるつもりがなくても、会わないときは会わないもんだな。
助かるけど。
彼女の存在なんていつもの事なのに、4月に再会して、奏ちゃんに偶々彼女がいなくて、誰に気遣うこともなく甘えることが出来てしまった環境が自分の立ち位置を錯覚させた。
会おうと思えば会える。
会いに行ける。
顔が見れる。
声が聞ける。
誘うこともできる。
小さいときは当たり前だった環境が、今ここにあった。
勘違い、しちゃってたよね……。
ズキズキ痛む胸を押さえながら誰とも会いたくなくて会議室に引きこもる毎日だ。
助かることにプレゼン作成の以来が増えて黙々と作業に没頭できた。
それでも頭に浮かぶのは奏ちゃんの事。
舞い上がっていた分、学生の時にはなかった切り裂くような胸の痛みと悲しみに、今までのように軽く乗り越えられない。
いや、今までも決して軽くはなかったけど。
でも、奏ちゃんも私もお互いがまだ若かったからこの先を期待できたんだ。
いつか、気づいてくれる。
いつか、私を見てくれる。
勝手な淡い期待を持ち続けてしまっていた。
そんなこと、誰も約束してくれないのに。