Five seconds ー恋が始まる5秒前ー
「お茶もありますから」
彼は嬉々として小皿に取り分ける私の背中に向かって言う。
「あ、はい」
どこに何があるのかを熟知しているにも関わらず、わざわざ言うのは心配性だからだろうか。
せわしなく準備をしていて気がついた。
「菓子楊枝がないんですけど…」
お菓子を食べるときに必要なそれ。
いつもあるはずの場所にない。
フォークもスプーンも綺麗に並べられているのに、それが置いてあるスペースだけごっそり無くなっている。