2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Five --**
「栞、すまない……。あ、あの、落ち着いて聞いてほしい……、僕は今、ある病気で入院している」
あの人は、そう言って電話の向こうで啜(スス)り泣いた。
泣き声を殺していても、ときどき声がもれる。
その声が、ワタシを崖の下へ……二度と地上には戻ってこれないくらい切り立った崖の下へ、静かに突き落としていく。
「…………………HIV感染……」
ワタシはワナワナと震える口で、たった一言を絞りだした。
「……発症も、しているかもしれないんだ」
あの人は泣きながらそう言った。
「……それって、治らない病気だよね」
ワタシは確認するようにあの人に聞いた。
本当は、知っている。
エイズを発症したら最期だってことも。
薬と体の相性次第では、発症を遅らせたり普通に生活できるってことも。
でもワタシの知識はそれくらいでしかなくて、それ以外持ってなくて……。
ワタシは一番辛いあの人に、分かり切っていることを聞いてしまった。