2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Five --**



「直貴!」


ヒデのその声で我に返った俺は、“追いけろ”と言わんばかりのヒデの指の一指しで、やっと金縛りが解けたように小峯栞のあとを追った。


店を出ると、コートもバッグも持たない小峯栞が店の前の道路に力なく座っていた。


「……あ、あの……」


俺はどう声をかけたらいいか分からなかった。


口から出たのは“あの”という言葉だけ。


いつの間にか、力なく座る小峯栞の背後の俺の後ろにヒデと雪ちゃんが立っていた。


雪ちゃんは小峯栞が店に置いてきたコートとバッグを持っていた。


ヒデは、口を一文字に閉じて両手の拳を握っていた。


俺はというと、そんな小峯栞に何も声をかけてやることはできず、ただ小峯栞の後ろ姿を見ることしかできなかった。


「ワタシ……、死ねって……」


小峯栞は小さな声でそう言った。


「……“死ね”って……」


何度も香水の彼女の言葉を繰り返す小峯栞。


背中が、肩が震えている……。
 

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