2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- One --**



「痛ったぁ……」


4本目のビールに一口口をつけたところで、左足のアキレス腱のあたりにズキンとした鈍い痛みが走った。


高校の時に、練習中に切ったアキレス腱の古傷だった。


たぶんワタシの心の古傷は、突拍子もない時にこうして鈍く痛むんだろう。


楽しかった記憶はすぐに思い出せないのに、こういう辛くて苦しい記憶はどうしてすぐによみがえってくるんだろう……。


ワタシは不思議でたまらない。
他の人はどうか知らないけど、ワタシの記憶の場合はそんな傾向がある。


「はぁ……」


アキレス腱のあたりをさすりながら長いため息をつくと、またワタシの目からは温かいものが流れてきた。


――痛いから泣いてるんだ……。


ワタシは自分に言い聞かせた。


テレビの向こうからは深夜のお笑い番組。くだらなすぎてさらに泣けてくる。


少しずつ退いていくアキレス腱の痛みにかこつけて、ワタシは口をつけたばかりのビールを口いっぱいに含んだ。
 

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