2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Six --**
ジャケットを脱いだはいいけど、どうしたらいいか分からないといった顔の桃原直貴にワタシは近づいた。
――今日だけでいいからワタシの夢、叶わせてね……。
“ごめん”と何度も心の中で謝りながら、ワタシは桃原直貴に抱きついた。
でも、桃原直貴はワタシをさっきみたいに抱きしめてはくれなかった。
「……俺は、つき合ってもない人とそんなことはできない」
そう言って、ワタシの肩をつかんで体から離した。
――そういうことをしようってわけじゃないの。
だってワタシは、もうできない体だから。
したくても、桃原直貴をいくら好きになってもできないから。
桃原直貴にワタシの体のことを知られる前に、小さな夢を叶えてもらいたいだけなの。
「帰ろう」
うつむいているワタシに桃原直貴は優しく言った。
「……」
ワタシは答えなかった。
何も答えられなかった。
また涙がどんどん溢れてくる。
泣きたくないのに、涙が止まってくれない。