2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Six --**



それからは苦難の連続だった。
小峯栞を後ろから抱きしめて何も思わないわけがない。


もうほとんど忘れかけている難しい数式とか元素記号とか……、もうありったけの難しいことを考えた。


でもそういうときに限って、数式も元素記号も途中で小峯栞になってしまう。


やっぱり俺は男なんだと思った。体が、手が触れているのに、こうして体温も感じているのに、何も想像しないなんてできなかった。


「もう寝た?」


俺は小峯栞に話しかけた。


「……」


小峯栞の返事はなし。


「……あのさ、ストーカーって呼ぶの、やめてくんないかな?」

「……」

「名前で呼べとは言わないけど、せめてストーカーだけは勘弁して?」

「……」


俺だけ一方的に話してしまっている。小峯栞は規則正しく息をしているだけ。


「栞……って呼んでもいい?」


思い切ってそう言ってみた。


「……」


寝てしまったようで、小峯栞は無反応だった。
 

< 136 / 613 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop