2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side Six --**
それからは苦難の連続だった。
小峯栞を後ろから抱きしめて何も思わないわけがない。
もうほとんど忘れかけている難しい数式とか元素記号とか……、もうありったけの難しいことを考えた。
でもそういうときに限って、数式も元素記号も途中で小峯栞になってしまう。
やっぱり俺は男なんだと思った。体が、手が触れているのに、こうして体温も感じているのに、何も想像しないなんてできなかった。
「もう寝た?」
俺は小峯栞に話しかけた。
「……」
小峯栞の返事はなし。
「……あのさ、ストーカーって呼ぶの、やめてくんないかな?」
「……」
「名前で呼べとは言わないけど、せめてストーカーだけは勘弁して?」
「……」
俺だけ一方的に話してしまっている。小峯栞は規則正しく息をしているだけ。
「栞……って呼んでもいい?」
思い切ってそう言ってみた。
「……」
寝てしまったようで、小峯栞は無反応だった。