2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side One --**
「ちょっと待って。これと同じの頼むから」
俺は、俺のグラスを取ろうとする彼女を制してそう言った。
だって、この酒も香水の味になってしまっては困る。
「えぇ〜っ、一口だけだからぁ」
彼女は食い下がる。
「……分かった。じゃあ飲んでいいよ。俺、ちょっとトイレ行ってくるから」
「わぁ〜、ありがとう〜!早く戻ってきてね、モモハラくんっ」
――あえてここも言わないでおこう。俺は“トウバル”だ。
でも、これであの彼女から解放される。トイレに行きたかったわけじゃないし、飲みかけの酒もまた頼んだら済むことだ。
それに、名字を間違われることにも慣れている。
両親の仕事の都合で小さい頃、沖縄から引っ越してきたときから間違われ続けてきた。
“モモハラ”も間違いじゃないから否定はしない。ただ、それだけのことだ。
そして、俺が嗅覚を元に戻そうと立ち上がったときだった。
彼女――つまり、小峯栞も立ち上がったのは。