2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side One --**
どうやら隣の雪という子に何か話しかけているみたいだ。
俺は小学校の先生を目指していたから、人の名前を覚えることが得意だった。
一度聞いたらすぐに覚えられるほうなんだ。この特技はけっこう重宝するから気に入っている。
少しの会話のあと、小峯栞は財布から金を出して雪という子のそばに置いた。1万円札だった。
そして、そのまま一度も振り返ることなくその場をあとにした。
俺は急いで雪という子のそばに行き、その子に話しかけた。
「あの、今の人、帰ったの?」
すると横槍(ヨコヤリ)が2本入った。
「モモハラくんっ!」
「なんだよ、手ぇ出すなよ!」
不機嫌な顔をしたあの香水の彼女と、その雪という子といい感じになっているチャラチャラした男。
――あえて何も言わないでおこうか。俺は手を出しているわけじゃない。
仕方がないから、俺はその無造作に置かれた1万円札だけつかんで小峯栞を追いかけることにした。