2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Eight --**
「そんな話だったね」
ワタシはお茶を飲むことすら忘れ直貴の話に吸い込まれていた。
「ここにも、俺の大事な人の灰が撒かれてる。『花咲かじいさん』みたいに花は咲かせねぇけどさ、毎年きれいな桜が咲くんだ」
直貴は木の幹をポンポンと優しく撫でながら言った。
「え……」
ワタシは突然のことで言葉を失ってしまった。
「……俺の弟。俺が大学4年のときに首を吊って死んだんだ」
「……うそ……」
直貴は悔しくて悲しそうな顔をしながら淡々と話す。
ワタシは直貴にかけてあげられる言葉を何も持っていなかった。
「弟の夢は引っ越し屋になることだった。俺は小学校の先生になりたかった。俺が教育実習で余裕がなかったとき、弟は高3で死んだんだ」
「なんで……?」
「原因は分からない。でも俺は弟の変化に気づいてやれなかった。教師を目指す俺があろうことか家族の変化にすら気づけなかった」
直貴は悲しく笑った。それがワタシには泣いているように見えた。