2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Nine --**
そして沈黙。
カタカタと火にかけたヤカンが音を立てる。
それ以外は、この部屋に響く音はない。会話をしているうちにコーヒーの準備は終わってしまった。
ワタシはキッチンのシンクに寄りかかり、雪の背中をじっと見ていた。
すると雪の背中が少し動いて、次の言葉を言うために息を吸い込んだのが分かった。
「……何かあった?」
雪はワタシに背中を向けたまま、それだけ言った。
「……別に何もないよ。ただワタシが嫌になっただけ。あの人なんか重いんだもん、疲れる」
――……言えた。
ワタシの気持ちの整理というのはこのことだった。
雪に何と聞かれても、あまのじゃくのように右と言われたら左と言って、上と言われたら下と言う。
早い話が、ワタシの気持ちと反対のことを言って、嘘をつき通すってことだ。
心が痛くて痛くてどうしようもないけど、それはワタシが決めたことだから最後まで嘘をつき通さなきゃいけない。
「……そう、なんだ」
「うん」