2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Nine --**



ワタシの心を見透かすかのような雪の目に、ワタシは一瞬言葉が出てこなかった。


「……嘘なわけないじゃん」


ポーカーフェイスには自信があったのに、ワタシは動揺してしまった。


「そう。じゃあ本当に桃原さんのことはいいんだね」


雪は気づいただろうか。
そう言う雪の言葉さえ、ワタシを試しているように聞こえてならない。


「いいも何も、なんにもなかったわけだし関係ないよ」


ワタシは少し冷めてきたコーヒーをすすった。


「そう……、分かったよ」


雪はそう言って、ワタシに少し笑いかけてくれた。


なぜなんだろう。
その笑顔さえも、ワタシには見透かしているようにしか見えない。


「あっ、そうだ!雪、この部屋にあるもので何か欲しいものがあったらもらってっていいよ?ワタシにはもう必要ないからさ」


ワタシは突然、雪にワタシの私物を何かもらってほしいという衝動にかられた。


それを抑えることもできず、言ってしまってから“しまった”と思った。
 

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