2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Nine --**
「……どっか行くの?」
――後の祭だ。
こういうことを“後の祭”と言うんじゃないだろうか。
雪はワタシの言葉に敏感に反応して、不安そうな顔で聞いた。
「どこも行くわけないじゃん、契約があるもん。しばらくはここから出られないよ」
「そうだよね。派遣会社との契約だもんね。ごめん」
雪はそう言って、クローゼットの中の服や部屋に少しばかり置いてあるぬいぐるみを見渡した。
ワタシはキッチンで雪が部屋を見て回る音を背中で聞きながら、めいいっぱい溜まった涙をこっそり拭いた。
それからスーッと息を吸い込んでワタシは精一杯の明るい声で雪に聞いた。
「なんかいいのあった?」
「うん。このプーさん、もらっていくことにする」
「あ〜、雪好きだもんね、それ」
「うん。じゃあ、遠慮なく!」
「は〜い!」
雪が手に取ったのは、テレビの横に無造作に置かれた特大のプーさんのぬいぐるみだった。
あの人がゲーセンで取ってくれたものだった。