2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Nine --**
雪は知らないけど、いい歳をしたあの人はゲーセンが好きだった。
仕事が早く終わった日や時間があるときは、よくゲーセンに連れていかれた。
そこであの人は欲しくもないぬいぐるみをたくさん取ってくれて、くしゃくしゃの笑顔で手渡すんだ。
そんなことがワタシとあの人との密かなデートだった。
きっとプーさんも、ワタシなんかと心中するよりは雪にもらわれたほうがずっと幸せだろう。
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それからしばらくすると、いつの間にか直貴の話は終わって、雪の仕事の話やワタシの仕事の話などをした。
雪の気遣いなんだろう、ヒデのことには1回も触れなかった。
雪はコーヒーを残さず飲んで、自分の体くらいあるプーさんのぬいぐるみを抱えて帰っていった。
病気のことは悟られずに済んだ。
できれば部屋の中の物をもう少しもらってほしかったけど、でも雪の気遣いに感謝しなくちゃ。
そして部屋の鍵を閉めたあと、ワタシはまた泣いた。